おに山田というホームレス紙芝居・絵本作家について

おに山田というホームレス紙芝居・絵本作家について

 

おに山田の2019年個展『アイドル画展』が、荻窪ガレット&ソックス「あるいてる」さんで開催され、無事に千秋楽を迎えました。

不思議なことに連日連夜お客さんが訪れ、6日間という短い期間中にもかかわらず約80名ほどの来客を記録しました。

絵とお面が8〜10点ほど売れまして、おかげさまで山田が3ヶ月ほど食べて暮らしていけるお金を頂くことが出来ました。マネージャとして本人に代わって御礼申し上げます。

今回の画展は、個人的には過去一番面白く、まあ慣れてきたというのもあるのでしょうが、毎日毎日楽しく過ごさせて頂きました。短期間でありましたが大成功と言えると思います。

 

それもこれも、このガレット&ソックス「あるいてる」店長のゆかさん(以下・キャプテンorキャプ)の尽力によるところが大きいといえるでしょう。

いつ何時、どんなことがあっても、振り向けばキャプの笑顔がありました。この笑顔に救われたのは、私や山田だけではないでしょう。山田を目当てに来たお客さんもキャプの笑顔に癒やされたことでしょう。お店に期間中5回も来た人がいるくらいですから。

キャプは、少し客が引いて暇な時間帯があると「荻窪の客商売がいかに難しいか」や「レトルトカレーだと言ったら『ガッカリした顔をされる』のが意味不明」とか「アールグレイを出したら『嫌いなの』と言われる」などの話をしてくれました。

これらのトークは全て何度も何度もコスられていて完成しているので既に面白く、我々はその話を聞いてケラケラと笑っていたのですが、脳の片隅に「おい、タブー郎、この話どこかで聞いたことがあるぞ」というサインが出ていました。

そうなんです。荻窪を「新中野」に置き換えてみたら……なんと美智子カレーと寸分違わぬ同じことをキャプは発言していたのです。私と山田は、どうも「強気な商売人」が好きなようで、自動的にキャプの魅力に惹かれていたわけなんですね。17日から「美智子ガレット」に名前を変えるそうです。

 

しかし、それだけではありません。

 

なんとキャプは期間中におに山田を自宅に泊めてくれたんです。私のブログは日に200人も来ない山田のブログと違い、最低でも3000人は読むので変な影響があると怖いので、詳細はおに山田のブログで読んでください。

これからだ。 – おに山田 紙芝居アイドル http://oniyamada.com/archives/55749508.html

画展が毎日24時に終わると、山田が帰れなくなるのを可哀想に思ってくれたキャプは、自宅に部屋がたくさんあるのでひと部屋をあの乞食に与えてくださったのです。

1日目、2日目、いつものようにキャプと鍋をつつき、寝静まった頃、山田はキャプの洗濯物の中からパンティを探し、被ったり、臭いを嗅いでみたりしていたそうですが、とうとう3日目に事件が起きました。

キャプと炬燵で向かい合ってご飯を食べていたら、無性に「ワンチャンいけるかもしれない」と思った山田は(後半に書きますが彼はインポです)、少し手でチンコを半立ちになるまでコスり、キャプの目の前で丸出しになったそうです。

こんなカワイイ女性にチンコ出すかね普通…

「な、何してるんですかーー!!!怒」

当然、キャプは怒り自室へ逃げ込みます。そのまま朝を迎えたわけですが、怒ったままだと気まずい雰囲気になると思い、「もーなんでチンコ見せたんですか!」と部屋を出て笑いながら声をかけてくれたそうです。

「怒ってるのに、ヘラヘラして何も言わないんです。むちゃくちゃ怖かったんですよ」

キャプは当時を振り返って話してくれました。もし、そこで彼女が「もう画展は中止です! 不愉快です!」と言い出したら、どうなっていたでしょうか? 楽しいフィナーレを迎えなかっただろうし、とんでもないことになっていたと思います。

キャプ、毛虫のような黒い包茎チンコを見せられても我慢してくれてありがとう!

ただ……私も「今夜手マンするんで爪切ってます」と店の前で爪を切っていたのが非常に印象が悪かったらしく、もう二度とあるいてるでは画展ができないであろうことを覚悟しています。

いったい「おに山田」って何なの?

この、どうしようもない乞食、そしてホームレスのおじさんは、現在ハロプロの紙芝居を路上やライブ会場前で無償でやっているパフォーマーです。

よくライブに行くハロヲタの中ではもう有名人で、彼を嫌いなハロヲタは山のようにいますし、2ちゃんねるでも鬼のように叩かれています。

【おに山田さんインタビュー】「世界は、ハロプロとそれ以外でできている」TIFで話題になった紙芝居おじさんは、バツイチハロヲタのニュータイプホームレス紙芝居職人だった!
http://timsogo.com/tif_kamishibai_2018/

ハロプロ紙芝居おじさんの前についに本物のハロプロメンバーが降臨した話
https://blackthetaboo.com/archives/497

素晴らしすぎる“ど貧乏”アイドルオタク! ルンペン画伯の「現代アイドル画展」@ゴールデン街が楽しすぎる!!
https://tocana.jp/2016/05/post_9853_entry.html

【突撃取材野郎!】ハロプロ愛が爆発しすぎてヲタに嫌われちゃった“紙芝居おじさん”は、やっぱりヤバかった (2016年11月19日) – エキサイトニュース
https://www.excite.co.jp/news/article/Cyzo_201611_post_21001/

で、まあ、彼の正体を端的に言うと単なる「下着泥棒」です。

中学だか高校だか忘れましたが、彼はクラスメイトや同じ学校の女の子の下着を盗み、それを欲しい男子生徒に売るという会社を興していました。今で言うと若手IT社長なんですが、ま、犯罪予備軍ですね。

そのまま行けば立派な犯罪者となっていたんですが、ある時、間違えて学校一のワルの彼女の下着を盗んだことがバレ、そいつにボッコボコにされるという事件が起きました。

その事件のせいでクラスでは単なる「パシリ」程度のカーストから、「奴隷」というカーストにまで落ち、以降「なんかむしゃくしゃするから殴らせろ」と言われてはボコられるという人生を歩んだそうです。

とても気持ちが分かります。私がもしクラスメイトだったら、彼らと同じことをしたでしょう。私の方が年下なので失礼なことは重々承知ですが、殴られて当然でしょう。

さて、こうなってしまった山田さんは、絵を描くことで一発逆転を図ります。が、基本的に思考回路が小3なので何をしていいのかが分かりません。一応、絵の教室には通っていたものの、漠然としか将来が捉えられていませんでした。

人生を変えた大学受験

ここで彼は美術系の大学に入り、それなりに過ごしていれば、少しは何とかなったかもしれません。行く意味は無いと言われていても大阪芸大くらい出ていれば、他人の評価なんて変わっていたかもしれません。

それなのに彼は……大切な受験の日に雪が降ったという理由でやる気を無くしてしまい、京都の任天堂に遊びに行ってしまうのです。何も考えていないんですよ、この頃から。雪が降ったからもう嫌だ、というのは小3でも言いませんね、鳩くらいの脳みそなのでしょう。

 

家に帰って、父親にボッコボコにされたそうです。

 

そりゃあそうでしょうよ。大学受験って当時受けるだけで3万5千円ほどしたはずです。それだけでも勿体ない話なのに、人生まで無駄にするなんて…。

晴れて高卒となった山田青年は、東京へ行こうと考えます。なぜ東京だったのかは今となっては分かりませんが、とにかく東京だということで生まれ育った奈良を飛び出しました。自転車で野宿をしながら、20日くらいかけて東京都へ入りました。

そこで力尽きた山田青年、もうボクこれ以上動かれへん、ということでその場で倒れてしまいます。その場所は、東京都とは聞こえがいいですが「ほぼ神奈川の飛び地」と言われる町田市でした。

ああ……ボクは大学に行かれへんかった
こんなにも頑張ってきたのに……
神様はなんて不公平なんや!

山田青年は世界の町田で叫びます。いいえ、山田くん。神様は超平等です。あなたに起こったことは全て因果応報。自業自得、時代を先取りした自己責任だったのです。

そうや!
美大で働こう!
そしたら美大出たことになるんちゃうか!?

脳みそが鳩ですから、思い立ったら吉日です。彼はなんと「多摩美大の購買部のおじさん」という立ち位置を手に入れました!

あの調子で美大の生徒たちに、

「はいはい、イーゼルね! あるよ!(キムタクのドラマのマネで)」
「版画にはバランタイン」
「丸ペンじゃないとアカン? Gペンにせーへん?」
「油壺の臭いたまらんわ〜〜」

などと日々を楽しく過ごしていました。聞く所によると、多摩美ではかなりの有名人だったそうで人気があったそうです。

そんな彼に好意を寄せる女子生徒も……。

なんと彼はその中の一人と真剣交際、結婚へと至るわけであります。

きっと、
山田さんにとって、
とても幸せな時間だったと思います。
そして大切な大切な思い出なんだと思います。

「私は町田に住みたいわけではない!」
そう言って奥さんが出て行く日までは……。

底辺の人間

さて、彼はその時からずっと「介護」の仕事をしながら絵を描いています。なぜ介護なのかと問うたことがありますが、答えはこうでした。

「ボクは底辺の人間。介護も底辺の仕事。だからいっぱい仕事があるの。みんな選ぶから仕事がないないって言うけれど、選ばなきゃ仕事は山のようにある。ボクは仕事には困らないの」

正直、こう言い切れるのは人間が強くないと言えません。私は山田さんに学んだことがたくさんあります。彼はひとことも口にはしないけれど、「みんな、なーにをそんなに格好つけているの? そういうのやめたら楽になるし、面白おかしく生きていこうよ!」という声が聞こえてきます。

ハッとしました。

企業で働いたことのない山田さん、30万円以上見たことのない山田さん、絵のコンクールに全く引っかからない山田さん、出版社を漫画のように門前払いされた山田さん。

なのに彼は毎日楽しそうに生きています。朝起きて、介護をして、夕方帰ってきてビールを飲み、ちょびっと飯を食い、SHOWROOMをやって寝る。

そして毎週金曜日は新宿南口ルミネ前でハロプロ紙芝居をやっている。そこへ見に来たお客さんと仲良くなり、居酒屋へ行く。彼、彼女たちが画展へ来てくれる。路上で知り合ったお友達は、いったい今何人に増えたのでしょうか。こんなにも絵が売れる画家って他にいるのでしょうか?

路上が恋人

これは山田さんの口癖です。彼のお友達は全て路上で知り合った人ばかり。私も、彼の路上の友達の一人です。

「岡本タブー郎です」

初めて紙芝居を見に行った時、そう挨拶する私に彼は「そんな気がしてましたよ〜」と言いました。「好意的に見てくれてたから、岡本さんかと」。

山田さんはBLACKザ・タブー編集部に手紙を送ってきました。その内容も彼らしい煽り口調で「岡本さん、あなたぜひ来てください!」と書いてありました。そう言われたら行かないわけにはいきませんよね。

初めて、外で、紙芝居をやっている彼を見た時、私は少し胸が熱くなりました。

この人、こんなところで、よく大声を出して紙芝居なんてできるなあ。

それも毎回警察に止められたり、酔っぱらいに絡まれたりしているのです。

これぞ、表現者ではありませんか。

そこら辺の理屈ばっかりこねてるサブカル野郎どもや、綺麗な写真をインスタでアップして「俺はインフルエンサー」とか言ってる奴が、私の中でゴマくらい小さく見えました。

このおっさんを起用せな編集者として嘘やで。

当時私はすでに編集長でした。「すいません、いったん持ち帰ります」としか言えない木っ端の編集者とは訳が違います。その場で即決しました。

「山田さん、うちでイラスト描きましょう」

まず、やる!

これが山田さんと私の共通点だと思っています。とにかく行動を起こす人が素晴らしいと信じています。グダグダとできない理由を並べている奴は、死ねばいいと思うのです。

姫乃たまちゃんも来てくれたのら〜

しかし、そうして尊敬しているつもりでも、いつも山田さんには腹を立てています。なぜなら彼はやはり中身が小3だからなのです。

・眠たくなると子どものような駄々をこねる
・飲み屋で平気で寝る
・ダメだと言ってるのにチンコをすぐ出す
・旅行に行って普通に観光しようとする
・貯金ができない
・犬食いをする
・会社の携帯を私用で使う
・臭い
・汚い

書いてて思いますよ。俺、本当に尊敬してんの? と。腹立つコトばっかですよ。せっかくの尊敬をこれらでチャラにできるほどですから、本当にすごい人なのかもしれません。

2018年も大変でした

昨年。まさかの、二十歳の女の子を弟子の漫才師・三木田(夏わかめ)と取り合いして、負けたんですから。そりゃ負けるっちゅーねん! 45のおっさんが二十歳の子と真剣交際することを私は個人的にめっちゃ期待していましたが、そりゃ負けるっちゅーねん! (意味もなく泣けてきた……泣)

しかも、忘年会をやるよって段になって「ボク、三木田が来るのなら行かへん!」とみんなのあごが外れるくらい唖然とするようなことを言い出したんですよ。結局「山田さんがそこまで言うなら、もう中止にしましょうか」と相方の木村が言うほど。忘年会は流れました。

実は雪が東京に降ったら三木田の家に山田さんを連れて押しかける予定でした。そこで、二人素っ裸で殴り合いをしてもらおうと。もちろん動画撮ってアップするつもりで。それで何とか二人を仲直りさせたいと思っていましたが、先日の画展に三木田が現れ、山田さんに謝罪するという和解がなされました。年下、それも15歳も下の子に謝らせるなんて、なんて大人気ないんでしょう。

三木田に謝られていやいや許すホームレス

そんな、毎日をノーストレスで過ごしていると思われる山田さんですが、人に無闇に「生理的に嫌い」と言われたり「屑みたいな絵を描くな」と言われたり、お母様の誕生日に何でも買ってあげるよと言ったら「ボールペンでいい…」と言われたりして、それが徐々にボディーブローとなって効いているのでしょうか、彼インポなんですよね。

もう、未成年とセックスしている! か、人妻とセックスしている! という背徳感無しには挿入が困難になっているそうで、タイのバイアグラ「シデグラ」も全く効き目がなかったんですよね。

でもね、山田さんにはもう一度結婚してもらいたいし、幸せな家庭を築いてほしいと願っています。きっと彼は子どもも欲しいだろうし。

インポテンツだけど、オナニーは好きなので、精子は採取できます。そんな感じでも結婚してくれる女性が現れないでしょうかねえ。

 

 

……ていうか、現れる気がする。山田さんといると奇跡ばかりが起こるので……。

 

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