家宅捜索は突然に カルロス・ゴーンも驚いた日本の司法制度 ある日、こうやって僕は拘束された

えらい頭にきたんでしょうね、ゴーンさん。期待していた記者会見ですが「私はすべてを知っている、しかし、今は言わなーい!」という内容で残念でした。国外逃亡劇は見事としか言いようがありませんが、あれでは日本を悪者にするのは難しいでしょう。次の一手はNetflixで『Naked CEO』という映画を作ってもらうしかないんじゃないでしょうか。
ただ、私も警察や検察への怒りっていう意味では、彼に同情します。
私も何度か警察の取り調べや勾留、家宅捜索をされたことがあるので、あの歯痒い思いは一生忘れることができないでしょう。こっちはもう「起訴しないで!」っていうことで必死でした。だって、起訴されたら絶対に有罪になってしまう。私は一度、証拠も何もない事案で起訴されそうになったことがあるんです。素直に全部喋っているのに、「おまえ本当のこと言わないなら泊まっていくか?」と脅迫されたんですよ! まるで言うことをきかない子どもに「じゃあもう武蔵村山のキッズランド連れて行ってあげないぞ!」って言ってるのと同じようなレベルで諭してくるんですわ。
そんなわけで今日は、私が経験した「家宅捜索とはどんなもんや?」を書いてみたいと思います。
ただ、これは2019年3月15日にメルマガで配信した内容を加筆・修正したもので、1/8くらいに内容を薄めていますので、すべて実名で出している原文を読みたい方は是非そちらをご購読くださいね。
エロ本やってると犯罪と隣り合わせでした
私はサラリーマン時代、URECCOというエロ本から、GON!という当時サブカル誌をやめてドエロ本に変わっていた雑誌に異動になりました。そこでは来る日も来る日も出会い系・ネット掲示板・ナンパなどで女の子を捕まえては、ハメ撮りして雑誌に載っけるというコンプライアンスもクソもないものを作っていました。もちろん命令です。会社の命令で毎日20時間は出会い系をやっていました。
私みたいに二流大学を出ていますとね、毎日毎日女体を見まくっていると、下手にいろいろ考えちゃってどんどん精神的にきつくなってくるんですね。「わーい! お◯んこだー!」とは、やっぱならない。「このままじゃダメだ……」とますます強く思うようになりました。
今から思えば、サラリーマンの悪いところが如実に出ていましたね。辞めりゃあいいんですよ。転職か起業でもすりゃあ良かったのに、他所でやっていく自信がないもんだから悩むことだけは一人前だったわけです。
鬼、としか形容する術がない、スキンヘッドで身長185センチのT編集長に毎日奴隷のように命令され、美人局に遭っても爆笑され、撮ってきては「ブスばっかじゃねか!」と、どうせモザイクかけるのに怒られる日々でした。
そんなある日、隣の編集部のN編集長から会議室に呼ばれました。Nさんは、久田将義編集長(第一期)の時に副編集長で、その時はすでに久田さんが他社へ転職し中園さんが編集長として実話ナックルズを指揮していました。
「GON!、終わるよ岡本。ダメだろ、あんなことやってちゃ。おまえら捕まるぞ」
中園さんは私たちの編集部のことをよく見ていたようでした。会社の幹部会議でT編集長は叱責され、GON!は一度解体するということが決まった…とよその編集長から聞かされたのです。
「それでな、岡本、うち来ないか?」
Nさんは行動力だけは本当に速い人です。私の机に置いてある本が意外と社会的な書籍が多かったので「こいつは使える」とでも思ったのでしょう、スカウトしてきたのです。
「いやいや、Nさん…ナックルズはちょっと…」
私はナックルズが大嫌いでした。URECCO時代、多くのタレント事務所と関係を持ち、アイドルから女優までグラビアを撮ってきましたが、そういうのとは関係なくナックルズは真偽不明な芸能ニュースを実名で書き散らします。その度にいろんな事務所から電話がかかってきて「もうおたくの雑誌には出られない」とお怒りを食らっていました。くっそー、憎きナックルズ、我々エロ本班はみなそう思っていました。
3回ほども面談をやってくれて、最終的には私がNさんの熱意に押され、異動することを承諾しました。でも正直、先ほどのサラリーマン気質が出ていたかもしれません。俺なんかナックルズで役になんか立たないよ…という怖さもありました。
いろいろあって異動して、副編集長になり、ちょうど1年経った頃でした。
「岡本くんさあ、会社に来てくれる? 君に用があるって、刑事が40人も来てるんだけど……」
総務のMさんから早朝にこの電話をもらったのは、忘れもしません、3月の今ごろでした。取調室の窓から、桜が見えていましたから―――。
偉そうな刑事の態度に……つい根が……
会社に警察が来ている。なんだか良く分からないけど、たぶんGON!のことだなと思いました。公序良俗違反、わいせつ行為、未成年淫行……もし、やってるとしたらそのあたりのことでしょう。私はすぐに同僚のSに電話をしました。Sは既にGON!からメンズナックルというファッション誌に異動していました。
「もしもし岡本だけど、悪いな朝早く。あのな、警察が俺を探しに会社に来てるんだって。何のことかはさっぱり分からないけど、とにかくあのハードディスクな、持って帰って」
Sは眠そうな声から一気に覚醒したようで「どうしたんスか!?」と聞いてきました。
「分からん。でも、悪いことをしてるとしたらGON!のことだろ。とにかくあれだけは隠せ。それからお前らまで警察が行くことはないと思うけど、もし来たら『知らん』と言い通せ」
あのハードディスクとは、私やSが毎日のようにハメ撮りしていたデータを保存している会社用のハードディスクドライブのことで、GON!が使っていた備品入れにまだ入ったままでした。完全なる証拠となるので見つかったら今話題の「韓国の歌手がわいせつ動画盗撮で逮捕」(※原稿作成時)みたいなことになります。例え会社の命令でやっていたとしても、通用しないでしょう。
関係各所に電話を入れていたら、いつのまにか会社に着いてしまいました。首都高・西神田入り口横のパーキングには警察の装甲車が何台も停まっています。予想外の物々しさに若干あせりました。
「君が岡本くんかあ。いやあ待ってたよ」
促されるままに会議室に入ると、本当にたくさんの私服刑事が狭い会議室にぎゅうぎゅう詰めでした。私はその対面に座らされ、右は会長、左は社長が座っていました。二人の幹部に挟まれたソファの真ん中で、私は警察の尋問を受けることとなります。
ここまでは以前のブログでも書きましたね。よろしければどうぞ。
https://blackthetaboo.com/archives/619
「なんでしょうか?」
本当に警察の意図がわからないので、私も冷静に質問します。
「あんた、去年までGON!って雑誌にいた。間違いないね?」
「…はい」
一番ど真ん中に座っている偉そうな青ひげのトレンチコートを着たおっさんが私に質問します。
「編集長はT編集長、だったね?」
「…ええ」
青ひげが「やっぱ、そうだ、こいつだね」というような表情で仲間の刑事と小声でなにか相槌を打っています。
「じゃあ聞くが……」
さあ攻め込むぞ! とばかりにいよいよ刑事が核心を突いてきます。こちらも刑事を睨みつけ、生唾を飲み込みます。
「去年の4月20日午後3時! おまえはどこで何をしていた!!!」
みなさん、いい機会だから質問させてください。いまちょうど2020年1月9日です。みなさんは2019年の1月9日に何をしていたかを正確に思い出せますか? 私にはちょっとこれ無理な相談です。思い出せないですよ。その場で手帳を出して、該当日を見ますがめぼしいことは何も書いていません。去年の4月がどんな4月だったかさえ忘れているのです。ある意味、警察のおかげでこの3月のことは今でも覚えてはいますけど…。
「いやぁ……すみません、ちょっとどうしても思い出せなくて」と、刑事に申し訳なく言ったのですが、
「おまえさあ……ちょっとは思い出してくれよ!」
と刑事が答えた瞬間、先程からずっと我慢していた怒りの導火線に火が付きました。
「オイ、待て、コラ
『おまえ』ってなんだ、『おまえ』って、あ?
さっきから黙って聞いてりゃ馴れ馴れしい、
おまえに『おまえ』って呼ばれる筋合い、
俺にあんのか? あ?
わしゃ犯罪者か? わしゃ犯罪者か!?」
ボク……単なる引っ込み思案の、パソコン大好き少年ですよ? 人に怒ったこともないんですよ? ただね、ちょっと、刑事さんったら言葉遣いが過ぎるかなって思って、キレちゃったんですぅ…。
会長「岡本くん! 相手は刑事さんなんだから、抑えて抑えて!」
社長「まあまあ落ち着いて! こんなところで怒らないで、頼むよぉ!(小声)」
会長も社長も私を両サイドから腕を掴まえて押さえ付けるのです。
「だって、会長〜、そりゃないっすよー。僕一生懸命思い出そうと協力してるのに、『おまえ』とか言うんですもーん。帰っていいすか? 帰りまーっす」
刑事の方も私の態度で『気づき』を得たようで、全員で協議しています。私がマジで二人を振り払って部屋を出ようとしたら、
「お、岡本さん、申し訳ありませんでした。『おまえ』とは言い過ぎでしたね。撤回させてください」
協議の結果、確かにその口の聞き方はまずいということになったようです。
「あ? なら聞いてやんよ」
私もまたソファに座りなおしました。しかし、ここから先は「マジで帰れば良かった」と思うことの連続だったのです。
(つづきはまた明日)
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