ハリウッドのセクハラ事件で思い出した私が過去に犯したとんでもない下劣セクハラ取材

あれは、閃きだったんです。
何の迷いもありませんでした。
全ての犯罪者がそう言うように、
「悪いことをしている自覚は無かった」んです………。
私を実話ナックルズに引き抜いてくれた中園編集長が、「ちょっといいか」と会社の近所の焼き鳥屋へ誘いました。あれは東北で震災が起こるちょっと前だったでしょうか。その言葉のトーンと暗さに何とも嫌なものを感じながらも私は飲み屋へついて行きました。
「実はな…ナックルズから飛ばされることになった」
会社帰りのサラリーマンで賑わう焼き鳥屋のカウンターに座り、中園さんは空を見つめながらポツリと言いました。私は右隣に座る中園さんを見つめながら「そう……スか」としか答えませんでした。それくらいのことを言い出すのは何となく分かっていたし、そのあと何を言い出すかもだいたい予測がつきました。
中園さんは低迷していた実話ナックルズをV字回復させた伝説の編集長です。どん底から這い上がる時の編集部の雰囲気は非常に明るく活気がありました。私の編集者人生の中で最も輝いて、最も調子に乗っていた時期でした。とにかく毎日が充実しており、仕事をしているか飲んでいるかの毎日でした。この黄金時代の模様はまたいつか書きたいと思っています。
しかし、栄光はいつまでも続くものではありません。
“メシア”と言われた中園さんの神通力は衰え、売り上げは激減しないまでも横ばい、なんとも言い難い空気の中で編集部員たちは息をしていました。もちろん、あの時の売り上げが2017年現在で達成されれば「大ヒット」です。これから7割返品が当たり前の時代が来ることを知らずに、我々も営業も会社も取次も書店もコンビニも、無理な目標数値ばかりを掲げていたのです。
「別になあ…大赤字を作ったわけじゃない。健闘してるとは思う。それでも俺を異動させるんだったら『条件があります!』って会社に言ったんだ」
この中園節には何度も翻弄されました。中園さんは人たらしですから、ポジティブな話の時もネガティブな話の時も、人が気持ち良くなるような道筋を立てて話を進めます。内心「また始まったよ」くらいの気持ちで聞いている自分がいました。
「その条件ってのはな……『じゃあ岡本をください』ってな、ハハ、俺勝手にな言っちゃったんだ。ダメ元、ダメ元で聞くんだけど、お前……」
中園さんが全てを言い終わる前に私は言いました。
「はい喜んで。行きますよ」
レバ刺しを食べながら答える私の顔を中園さんが覗き込みます。
「いいのかぁ!? おまえ、ナックルズの副編じゃなくなるんだぞ!?」
ハハハッと笑いながら私は言います。
「ナックルズの副編やりたくてミリオン入ったわけじゃないッスよ(笑)。どうせ俺はGON!で死んでたんです。どこだって行きますよ。面白いことやるんでしょ?」
糞エロ本と化したGON!編集部で、来る日も来る日も出会い系サイトで援交女を捕まえては性器を撮影していた私にとって、中園さんは本当に救世主(メシア)でした。気が狂いそうになっていました。気が触れそうになっていました。会社の人間誰が見たって「ダメだろこの本」と言っていた時に、中園さんは私を活字の世界に引っ張ってくれた恩人です。その中園さんが私を必要としているなら、そりゃ行くでしょうよ。目先の出世なんてクソ喰らえ!です。次は私が恩返しをする番だと決めていたんです。
中園「それがさあ……新媒体を作れってことになってさ」
岡本「新媒体ですか? え、コンビニ誌ですよね?」
中園「そう。エロでもないグロでもないヤクザでもない政治でもない」
岡本「ぜんっぜん思い浮かばないんですが」
中園「強いて言えば、おまえみたいな本かな。新しい解釈の『GON!』みたいな」
岡本「なんスかそれ! めっちゃ面白そうですやん!」
こうして中園編集長は実話ナックルズを解任、私も一緒に異動することになりました。中園さんを惜しむ声は多々あれど、私の異動は誰も残念がる人はいませんでした。まあ、そりゃあそうです。俺、怖いからね。みんな「ザマアミロ」ってなもんですわ。
もうひとり、女の子も異動してきて、3人だけの編集部が作られました。
新媒体の名前は『仰天』。
世の中に2号しか出なかった伝説の雑誌なのです!
『仰天』を簡単に説明すると、世の中のあらゆる現象を、あらゆる角度からキャッチーに、またアブノーマルに捉えたデータ雑誌で、要するにPOPEYEのミリオン版とでも申しましょうか、若い世代に裏カルチャーをレクチャーするようなコミック雑誌でした。もう、この説明ムチャクチャ。やってた俺たちもよく分かってなかったんです。
「とにかくな、この雑誌はイコール岡本だ。おまえが面白いと思うことを全力でやってくれ!」
1号目を作る途中から中園さんが迷走していることは明白でした。こんなこと部下に言いますか? だったら俺に編集長やらせてよ! と言いたくなります。もうブレッブレだったんです(笑)。そりゃあそうですよ。ナックルズでは硬派な記事ばかりやってた中園さんです。急に会社から「笑える雑誌作れ」と言われてもピンと来てなかったのでしょう。
しかし、ここでヘタを打つわけには行きません。異動して新媒体を立ち上げたからには絶対に成功しなければなりません。中園さんを男にするのが私の仕事です。あの時はもうフル回転で24時間ネタを考えていました。
で、降りて来たんですよ、編集の神が。
「中園さん、ミリオンの女性社員にたちんぼをやらせましょう」
GON!の取材でよく行っていた新宿のたちんぼゾーン。あそこに女性社員を立たせて男に声をかけられるまで待つ。こちらから催促せずに男が言ってきた「値段」、誰が1番高かったでしょうかゲーーーム! これだ! 絶対ヒットする!!! これを袋とじにしてクイズ形式にするんですよ。誰が1位だったか、絶対に袋とじを破りたくなるじゃないですか中園さん!!!!
「岡本ぉぉぉ!!! それだ、それだよぉぉぉ!!!!!」
頭の良いみなさんは既にお気付きかと思いますが、これを本当にやってしまったら、れっきとしたセクハラ・パワハラです。
もしやらなかったとしても、社内でこんなことを口に出してしまったら、完全にアウトです。
女性たちがもしも労働組合に駆け込んだら……女性団体にそのことが漏れ伝わったら……地雷を踏んだらサヨウナラ、それでも私はやってない、嗚呼、ミリオン出版は女性の敵として新聞マスコミに書き殺されたでしょう……。
でもみなさん、
どうなったと思います?
ミリオン出版に労働組合なんか無いんすよ。
ええ、
この企画、
本当にやったんですよ。
ダメ元で
他部署の女性社員たちに
「たちんぼやんない?」
と声をかけたところ、
ほぼ9割の女性たちが
「面白そう〜〜やるやる!!!」
と答えたんです(笑)。
おい、女性団体とやら!
ミリオン出版の女編集者を
なめんなよ!!!!
そんなわけで、
「第一回 チキチキ! ミリオン出版女性編集者争奪『お値段以上は誰だ!?』選手権」
の模様は後半に続く!
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