若きエロ本編集者を鍛え、励まし、癒してくれた駅前ソープ

若きエロ本編集者を鍛え、励まし、癒してくれた駅前ソープ

駅前ソープって聞いたことありますか?

これ、いわゆる格安ソープランドのことで、駅に近い好立地にあるにもかかわらず安く遊べる特殊浴場のことなんですよ。
広義では「本番なし」と言われているものの、私の知っている駅前ソープはほとんどが本番アリでした。東京だと新宿とか上野とか吉祥寺とか八王子とかに有名なものがありますよね。吉祥寺なんて「住みたい街」とか言われてるけど、駅の東側は風俗街だかんね。一度このブログで吉祥寺のアンダーグラウンドシーンを全て暴露してやろうかと思っておりますですよ。

で、この駅前ソープ。
指名できないことがほとんどです。
安いんだから指名すんなってことでしょう。
待合室で待っていて、どんな女性が来るのか分からないのです。

私は若い頃、「エロ本編集者たるものいつ何時でもパンツが脱げて勃たなければならない」と先輩たちから刷り込まれていました。とにかく自分たちに「選ぶ資格はない」ってことを自覚していました。

例えば「カラミの撮影」をしていて、急に男優役が体調不良になったとします。その時、とっさに代役に立てなければ「エロ本編集者失格」ということになります。裸になったはいいものの、勃たなかったら撮影にならんのです。股間にすりこ木を挟むわけにはいかないんです。

ということで、私は「修行」として、駅前ソープが視界に入ったらとりあえず入店するという訓練を怠らないようにしていました。

 

 

新宿三丁目にかつて、『新宿レモン』という駅前ソープがありました。レモンはエロ本編集者としての自分を大きく育ててくれた虎の穴でした。レモンによって育ち、レモンによって開花した、レモンは私という人間の生みの親であります(なんのこっちゃ)。

新宿の伊勢丹から、熊本ラーメン桂花を過ぎ、焼き肉長春館に向かう途中の右側にレモンはありました。ビルの2階にあったレモンは、長い階段を上がると受付と待合室があります。料金は早朝6時から夕方の17時にまでが13,000円(60分)、それ以降は16,000円という破格の値段でした。

初めて行ったのは20代半ばだったと思います。

別に風俗に行くのが初めてだったわけじゃないけれど、入り口の階段を上がって行く時はとても緊張したのを覚えています。

「ふふ、レモンも知らないようじゃ甘いな」
「悔しかったらレモン行ってから言えよ」
「え!? エロ本やってんのにレモン童貞なの?」

こんな心ない言葉を散々浴びせられてからのレモンですから、心臓がバクバクするに決まってますよ。噂に聞けば二十歳の嬢から70歳までの婆がいるとのこと。ちょ……幅が広すぎないか!?

昭和の商工会議所のロビーみたいな自動ドアが開くと、蝶ネクタイを付けたドアマンが出てきます。よく見るともうおじいさんですよ。頭髪は白髪染めで真っ黒に染められていますが、立体駐車場の受付でボタンを押しているおじさんが背広を着ているイメージです。

「いらっしゃいませ。受付へどうぞ」

ドアマンに促されて受付に行くと、ドアマンより全然若い40代くらいのカッターシャツ姿のおじさんがいます。あとで聞いたんですがこの人が店長さんだそうです。

「13,000円です」

歌舞伎町で飲んだあとに自分を勇気づけて行ったので、この時は早朝でした。店長は下を向いたまま値段だけを言います。金を払いました。

通常、ソープって入り口で払うのが『入場料』で、残りは部屋で嬢に直接払うことが多いです。それは「ここは特殊な浴場でして、入場料は頂きますけれど、部屋であったことは自由恋愛なので本人たちにお任せします」というお上への建前です。ですから部屋には“使わない”サウナ機が設置してあったりします。屁理屈として「ここは浴場です」ということになっています。警察への言い訳です。

しかしレモンは入り口で払うお金が全額でした。

そうすると、「美味しんぼ」と「サバイバル」がズラッと並んだ待合室で嬢が来るのを待ちます。
この待合室、入ってくるお客さん・受付の様子・嬢が3階のプレイ部屋から降りて来てグラスを片付けるところまで、全部見える部屋でした。
みんな美味しんぼを読んでいるふりをしながら、嬢が降りてくる度に横目でチラチラ見て「あの子かな」「あのおばさんかな」「あのおばあちゃんかな」とハラハラしていました。

どうやらどの女の子になるのかは『店長のものさし』のようでした。ですから客は店長にだけはとてもペコペコしていました。

・安い金額で遊びたい
・でもババアとデブは嫌だ
・店長さんおねがい!

という、どう考えても店側が上に立っているビジネスでした。選べないんですから、選ぶ資格がある人のところに権力は集中しますよね。

待合室で見ていましたが、本当にお婆ちゃんがいました。60〜70歳くらいのパンチパーマみたいなガリガリのお婆ちゃんがキャミソールを着ていました。

「怖い……あの人が来ても……自分はいけるのだろうか……」

まったく美味しんぼの内容が入ってきません。ただ漫画を膝の上で広げたあしたのジョーのように固まっていました。

 

「お客様、お待たせいたしました」

 

先程のおじいさんドアマンが私に声をかけてきます。ついに来ました。カーテンで仕切られた待合室の出口にキャミソール姿の女性が立っている足元だけが見えます。あそこまで行けばバラエティ番組『それは秘密です』みたいにパッとカーテンが開いて「ご対面〜」となるのでしょう(古いか)。

「おはようございます」

そこに立っていたのは体重60キロ位のレナさん(自称30歳)でした。見た目はマシュマロのようでした。ゴーストバスターズかな? と錯覚しました。受付で店長に「細い子で!!!!」と念じたのに、どうやら私にはサイコキネシスの素質はないようでした。

レモンは3階にあがると真っ直ぐな廊下がありました。その左右にいくつかのドアが付いていて、そこは嬢たちに与えられたプレイ部屋でした。私はマシュマロマン…いや、レナさんに1番突き当りの部屋へ通されたと思います。

各部屋の前を通ってどんつきまで歩いたわけですが、あえぎ声や話し声、笑い声、テレビの音、様々な味のあるノイズが聞こえてきます。それが異様に自分を盛り上げてくれるのです。

古ぼけたドアを開けると、とても情緒のあるソープの部屋でした。

6畳ほどの部屋の2/3はタイル張りで、そこには湯船が設置されており、残りの1/3には赤いカーペットが敷かれてセミダブルくらいのベッドが置いてあります。壁にはシャワーや水道の根本から伸びる配管が剥き出しで張り巡らされており、唯一外の空気を取り込めるように小さな窓がついていました。湯船に湯をためると部屋中が湿気に溢れ、ベッドのシーツもどこか湿っている感じがしました。

ミシュランマン…もといレナさんがドリンクを取りに部屋を出ている間に写真を撮りましたが、今となってはその写真もどこかにいってしまいました。

 

 

いろいろあって、事が終わると、レナさんは私の身体が日焼けして皮がむけているのを面白がり(夏だったので湘南ギャルをナンパするという企画でどえらい日焼けをしていました)、全身の皮をむいて喜んでいました。

「ねえ、飲みに行こうよ」

レナさんは私の上に乗り「うん」と言うまでズッシリと体重をかけつづけました。それからは毎日のように電話がかかってきました。若い頃はカッコ良かったので、まあ、これは仕方がないですよね。

レナさんとは、ややあって、彼女がレモンを辞めてから、また通い始めました。私は嬢をナンパしたいわけではなくて、レモンで修行したいのです。というか、次第にレモンの部屋でゆっくりするのが癒やしになっていきました。な〜〜んか落ち着くんですよね、あそこ。

レモンのおかげで、私は「何が来ても大丈夫」という体になりました。ライターの鈴木光司さんからもよく「君はすごいよね〜」と羨ましがられることも多かったですね。たいてい、どんなことがあっても、対応できるほどキャパが広がりました。18歳から78歳までが可動範囲です。

 

私はいったい、何を書いているのでしょう?

 

あ、思い出した。そうそう、ある日レモンが無くなったんですよ。あのビルと共に。三丁目を歩いている時に「えっ!?」となったわけです。ほとんど予告がなかったんじゃないでしょうか。
すぐにネットのソープ板を調べてみました。老朽化で終了……と書かれていました。彼女たち、おじさんたちは、どこへ流れていってしまったのでしょう……。

ソープランドって建て替えが出来ないんですよ。正確に言うと建て替えを禁じられているわけではないんですが、現在の風営法では建て替えてしまうと営業許可を一から取らなければいけない。はっきり言って、現行法の元で許可を取るのはほぼ不可能でしょう。消防法とかなんやかんやと厳しい取り決めがあるし、何と言っても売春をみすみす認めるような国ではないんですよね。

ですから、リフォームをしながら、何とか維持しているという形です。ソープランドって古めかしい建物ばかりでしょ? 全てはそういう理由からです。レモンが配管丸出しのビルだったのは単に古いからではなく、古いままで使わないといけない理由があったわけです。(世の中には営業許可付きで丸ごとソープを転売するオーナーもいます)

あの時はショックだったなあ……。

こうやっていきなり慣れ親しんだものが消えていくんですよ。皆さんも好きだったラーメン屋とか、よく通っていた定食屋さんとかが、ある日突然なくなっててショックだったっていう経験がございますよね? そんな感じでレモンは私の前から姿を消したんですよ。

 

あの時、言えなかったから今言います。
ありがとう、レモン!
楽しかったよ、レモン!

 

私の甘“酸っぱい”思い出です。