誰かの笑いが誰かを傷付ける時代に、なぜ僕たちは「ハロプロ漫才」を選んだのか|夏わかめ・三木田(ボケ担当)

誰かの笑いが誰かを傷付ける時代に、なぜ僕たちは「ハロプロ漫才」を選んだのか|夏わかめ・三木田(ボケ担当)

皆さんこんばんは。ロマンス語ればこの街一番、夏わかめのみきたです。

今日も、新宿の誰も知らない劇場で、誰も知らない人たちが出てくる、誰も知らないライブに出てきました。いわゆるフリーライブというやつで、エントリー料を払って出演させていただく仕組み。善良な社会生活を送る皆さんには俄かに信じられないかもしれませんが、だいたい30組、つまり60人ほどの芸人が出るのに対して、客が8人くらいだったりします。というかそれが、日常茶飯事なのです。

理論上、全員が客を1人か2人でも呼べば100人近くの人を集められるはずなんですが、蓋を開けたら、なぜか8人。その中でも夏わかめは頑張って集客してる方で、こないだなんか、お客さん7人来てた中の4人はうちが呼んだ客で、過半数獲得に成功してしまってましたからね。それってこの場所でやる必要あるのって話です。運営は芸人から集金できればライブに人が来ようが来るまいがどうでもいい感じだし、他の芸人はといえば、控室で「そういやドキュメンタル見た~? あれおもしろいな~!」などと無邪気に笑っている始末。お前が笑っててどうすんねんという話ですが、こんな恐ろしいイベントが東京という片隅で毎日のように行われているのです。これって一種の社会実験なのかな?と思うときもあります。

こんなもん仕事とはとても言えないのですが、他に出られる場所もなく、家で寝てるよりはマシだし、人前には出ときたいし、8人の客がたまに12人くらいになっていることもあるし、自分でイベントを打てる腕も力もないしで、しょうがなく、地獄の釜の底のような場所で、焦燥と鬱屈をごった煮にしつつ、今日も元気にハロプロ漫才をしてきました。

誰も知らない尽くしの場で、さらに誰も知らないハロプロの漫才をやる。柳楽優弥もびっくりの誰も知らないの重ね掛け、是枝監督の次回作のテーマはフリーの芸人で決まりだなという感じですが、一応、それには意味があるのです。

 

なぜ、ハロプロ漫才なのか。

 

それは、誰もやっていないから。掃いて捨てるほど芸人がいる中で、目立つには武器がないといけないと言います。その武器に、僕はハロプロ漫才は選びました。選択を間違えたような気もしますが、選んでしまったものは仕方ない。

一般的なテーマのスタンダードな漫才をやっても、絶対他の人には勝てない。特にスタートが遅い自分は、腕も度胸も経験も、他の人よりも圧倒的に劣っています。その部分では高校卒業してすぐに漫才やってるようなやつには絶対に勝てない。追いつけない。だから、舞台の上の技術で勝てないやつらには、そいつらが勝負してないところで闘うしかない。ということはハロプロしかない。だって、ハロプロのことなら絶対、そいつらに負けへんからね。

そして、今の時代、マニアックなものじゃないと残っていかないんじゃないかとも感じています。

共同幻想が崩壊しつつある昨今、笑いに限らず、最大公約数的なものは、もはや存在することが難しい。誰かの笑いが誰かを傷つけるということが大きくクローズアップされる今だから、笑いもある意味でエゴイスティックな、偏愛を見せるものでなくてはならない。かといって、別にマニア同士で集まって内輪で笑ってるのを良しとするのではなくて、偏愛を見せつけて、見せつけて、見せつけた先に、そのジャンルを知らない人も巻き込むような、普遍的なものがあると思うのです。「意味はわからんけど、何かおもろいな」、みたいな。

それが自分の場合、たまたまハロプロだったということで、他にも銀河鉄道999だとか、妖怪大戦争だとか、アース・ウィンド&ファイアーだったりするのですが、単純に、愛するものじゃないと気合いって入らないじゃないですか。お客さんは腕じゃなくて「熱」を見るんやと思うし、熱が無ければ漫才なんか、単に人前で嘘ついてるだけじゃないですか。今までずっと嘘ついてきた人生なんやから、せめて舞台の上では嘘つきたくないじゃないですか。

だから例えば、「前からコンビニの店員やってみたかってん、一回やってみよう」で始まる漫才なんか信じられなくて、そんなん絶対嘘やん、やってみたいわけないやん、と思ってしまい、夏わかめの場合「ハロプロをテーマにしたレストランやってみたかってん、お前はお客さんやって」となってしまうわけですね。「もっと手かけろ! ハロプロのジャケットか」みたいなツッコミも飛び出すわけです。全く、お恥ずかしいことです。

自分の好きなものを押し通せたやつが勝つ、そんな日を信じて、漫才をしています。腕や技術はともかく、方向性は間違ってないと自分に言い聞かせて、眠れない夜を過ごしています。鬼束ちひろのインソムニアとか聴いてます。

とまあ色々考えてやってるんですけども、一つ誤算があるとすれば、ハロプロ漫才が思ったよりハロプロオタクの皆さまに受け入れられていないということです。でもよく考えたら当たり前で、ハロオタの皆さんはハロプロを愛しているわけであって、別にオタクのことを愛しているわけではない。愛されているオタクもいますが、同好の士ってお互い仲良くしててもよさそうなのに、口を開けば「ファンとはかくあるべし」みたいな主義主張のぶつかりあい、日本赤軍もびっくりの内ゲバぶりなのです。

人によって解釈が分かれるのがアイドルのおもしろいところだし、大の大人が馬鹿っぽいのが美しいところなのですが、ハロプロ漫才やってるってだけでめっちゃ可愛がってくれるとか、そんなんもっとあってもいいんじゃないの。まぁでもそれは、これからの我々の精進次第ということなんでしょう。

あーあ! ハロプロオタクの大富豪みたいなんが急に現れて、なんかうまいことしてくれへんかなあ~! トントン拍子でいかんかなあ~!

 

 

三木田 武大フリーの地下漫才師「夏わかめ」のボケ担当。大学の進級に失敗、就活にも失敗した結果、「じゃあこれでいいや」という気持ちで芸人を志す。鼻につくインテリさが持ち味。ハロプロをこよなく愛し、ハロプロ漫才を得意とする。