フェイクニュースの作り方

ドラマ『フェイクニュース』の出来栄えが予想以上にちゃんと今を捉えていて、驚きました。
まさかドラマで「SEO対策」とか「タグでバスった」などというセリフを聞く日が来るとは。
NHKがこれだけのドラマを作ってしまうと、民放はやりづらくて仕方がないのではないでしょうか。
雑誌畑で来た私も、ご多分に漏れず今やネットニュースの編集をやっています。日々、Googleの仕様変更に一喜一憂し、アナリティクスでアクセス数を気にして、世の中の傾向を読むことに四苦八苦しています。
私は自分より先に紙媒体からネットニュースに転身して行った人たちを正直心の底から馬鹿にしていました。あんなのPV稼ぎの何でもないゴミ記事を毎日アップしているだけじゃないかと思っていました。
しかしやってみて分かったのは、良いところもあるなということでした。
まず、雑誌であれば、読者ハガキとかクレームとか人の噂話でしか雑誌の評価を得ることが出来ず、彼らが言う「こういうのが求められている」という企画会議はほとんど妄想でしか無いことに気付かされました(気付いてましたけどね)。全てが「曖昧」なんですよね。データが取れていないので、マーケティングも出来ていません。
ところがネットニュースはダイレクトに反応が返ってきます。恐ろしいほどに。これって雑誌をやってきた人間にとってはアドレナリンが湧くんです。とっても嬉しいんですね。もちろん、ダメなときは容赦の無い罵倒やディスりがやってくるので、私のように耐性がない人にとっては辛いかもしれませんが。
また、紙媒体でやってしまうと大打撃となる誤字脱字についても、親切な読者が間違いを指摘して教えてくれます。そしてすぐに直すことができる。これって雑誌には無い、未来感なんですよね(そもそもちゃんと校正しろって話ですよね、すんません)。
また、SEO対策と言われるタイトルの付け方や原稿の書き方というのは、実話ナックルズで散々学んだこととあまり相違がないので、すぐに馴染みました。ハッとするタイトル、心を抉るような表現は、弱小メディアの実話ナックルズだからこそやらなければいけないことだったし、よく考えてみると昔からやっていたことだったんです。
そうこうしているうちに、開設からたった1年で、私が副編集長をやらせて頂いているネットニュースは月間1000万PVサイトに成長しました。みんな、まだ紙媒体で消耗してんの? と、後輩たちにエールを送っておきます。
ただ、いいことばかりではありません。ネットニュースは「刹那」を商売にしている以上、常に時間に追われています。追われています、これマジで。
ライターから届いた原稿を、速い時は30分以内でアップすることもあります。その時、校正や推敲がやはり完璧とは言い難いものがあります。早く届けなきゃ、セブンイレブンの数ほどある他媒体に勝てないのです。ですから、この時に雑になってしまうことだけが悔やまれます。この辺は元雑誌編集者としての性でしょうか。
「PV稼ぎの何でもないゴミ記事を毎日アップしている」
ドラマの中で北川景子がこう言っていました。胸に突き刺さりました。確かに、ゴミ記事を上げてしまうことも否定できません。ココらへんはマジで何とかしないといかんと痛感しています。
ただ、北川景子にこうもズバッと言われると、気持ちいいというか、あ〜もう一度言ってぇ〜となるのは私だけではないはずです。もちろん北川景子限定ですよ。
また、時間が無いため、信頼できるライターしか起用できません。これまで培ってきた信頼関係がモノを言うのです。いま、ネットニュースはライターの取り合いですよ。どこもライターが枯渇しています。ネットニュースを今支えているのは「ちゃんとした書き手」であることは言うまでもありません。
先ほども触れましたが、実話ナックルズの存在意義というものがあります。なぜあの雑誌が今もああやって存在しているのか。
ナックルズは大手メディアが裏とりに走っている間、イニシャルでもいいから出しちゃえ! というポリシーがあります。もう、これは絶対にクロだ。クロじゃなかったら俺が責任を取る。こういう考えの人が歴代の編集長を務めてきました。
だから、決定的な証拠が提示できなくても出すことが出来たし、あの雑誌だからホントかウソかわかんないしと読者は楽しめるし、会社の都合や大人の事情で揉み消されることのない不思議な立ち位置の媒体なんです。
大手メディアだと、責任問題が重大だから、書きたいことが書けない時もある。その点、会社もコンパクトなナックルズは突っ走ることができる。なので、実はあの雑誌で書いているライター陣は、みなペンネームですが、事実を握っている新聞社の記者や本物の書き手が自社のうっぷんを晴らしている場合が多くあります(※私がいた頃はって前提で)。
イニシャルでしたが、TOKIOの山口の「何もしないなら帰れ事件」は世界で一番ナックルズが早かったじゃないですか。あと、ノリピーのシャブもね。
ですから、ナックルズやGON!を歴代やられてきた編集者って、フェイクニュースの構造を一番知り尽くしていると思うんですね。
ギリギリの線の記事を書き、そこに事実を載っけるという手法は、戦後のカストリ雑誌からヒントを得たものだと創刊者の比嘉さんが教えてくれたことがありますが、その手法を開花させ売りまくったのが久田さんであり、継承したのが中園さんだったんですよね。ここに、あの雑誌の存在意義があると私は思います。ミリオン出版は今月で無くなってしまいますが、ナックルズだけはどうか末永く継続させてほしいと外野ながら願っています。
で、
そのギリギリの線の記事から「事実」だけを抜き取ったものが、フェイクニュースです。
ここにはもう真実が最初からありませんから、「悪」しか存在しません。矜持なんてありません。
カストリ雑誌は装丁からしていい加減だし、裸もいっぱい載ってるのに、硬派な記事もあるよというのが特徴ですが、最初から「メディアでござ〜い」という皮被りは一般の人には見抜けません。
私はこれだけ記事の構造に慣れていると、そのサイトを見ただけで「あっ」と瞬時に分かります。ナックルズやGON!をやってきた人なら同じことを言うと思います。
私がぜっっっっっったいにリツイートしないように心がけているサイトがいくつかありますが、今回はそのうちのひとつが正義感溢れるサイトに捕まってしまったようです。
記事を読みましたが、これはもう、まさにドラマ「フェイクニュース」ではないですか。あのドラマは、このサイトを想定して脚本が練られたのでしょうか?
この媒体の背後に何があるのかは、今後出てくるでしょう。是非、文春の優秀な記者によって暴いて欲しいものですが、彼らがお客さんにしている高齢者には興味のないネタかもしれませんね。
では、どうすればフェイクニュースに騙されないようになるのか。
結論から言えば、無理かもしれません。みんないとも簡単に信じちゃうからです。事実なんてどうでもいい、面白ければ、嫌いなやつなら、叩いてもいい、と多くの人が考えているからです。だから、そこにつけ込んだ「みんなが好きそうな」ニュースがどんどん量産されていきます。書いている人も読んでいる人も、まったく罪の意識がありません。
フェイクニュースはこれからもどんどん私たちの生活に入り込んできます。断言します。
最後になりますが、これ。
このくだらない記事を楽しめずに怒ってる人は冷静になった方がいいと思いますよ。人生がしんどくなりますよ。
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