大坂なおみの問題はラケットを叩き壊したことじゃない それよりももっと深刻なこと

大坂なおみの問題はラケットを叩き壊したことじゃない それよりももっと深刻なこと

あ~~も~~、大坂なおみを思考停止で叩いてる奴、マジうぜえ。

YouTubeにもそういった動画が山ほど溢れているんだけど、そういうのはほぼ「ネトウヨ」のチャンネルばかり。はっきり言って、そんなものは見るに値しない。単なるノイズでしか無いのでじゃんじゃん「BAD」ボタンを押してやりましょう。

あのですね……この問題について、ほとんどのテニスファンはだんまりを決め込んでいますよ。いつも熱心にテニスを見ている人は、マジで「あほくさ!」と思っているに違いありません。

 

大坂なおみは排除していいほど適当な選手ではない

何を隠そうこの私、実はもう20年以上のテニスファンです。テニスは一度もやったことがないし、これから先もやろうとはこれっぽっちも思いませんが、昔からテニスを見るのが大好きでめちゃくちゃハマったスポーツです。

きっかけは「はるかなビシ」という漫画を読んだから。確か小学館のサンデー系にちょこっとだけ連載されていた漫画だとは思うのですが、小学生の頃にのめり込んでしまい3巻で終わっているんですが、その終わり方が「あまりにもオシャレ」だったために小学生の自分には理解ができず、作者のみやたけし先生に「4巻はまだですか?」と手紙を書いて送った記憶があります。かわいそうに思ったんでしょう、担当編集さんからドラえもんのシールセットが送られてきて感動して泣きそうになったことを昨日のように覚えています。

そんなテニスファンの末席を汚す私ですが、今回の大坂なおみのラケット壊しや記者会見拒否問題で、何も知らない奴がただ気に食わないからという理由のみで彼女を批判して貶めている現状が頭にきて仕方がないので、何の影響力もない自分ですが、ネトウヨどもの目を少しでも覚ますことができたらと思いブログを書いています。

もう一度思い出して欲しいんですよ。2018年の全米オープン、二十歳という若さの大坂なおみが、あのセリーナ・ウィリアムズにストレートで勝って優勝したことを。ものすごい快挙なんですよ。

しかも、この試合でセリーナ・ウィリアムズは審判の判定に納得せず怒りまくり、ラケットを叩き壊した挙げ句、審判に盾突き抗議をし、「泥棒」とまで言ってしまい、何度も警告を食らうという荒れに荒れた試合だったのです。

一方の大坂は終始冷静に試合を運び、ゴリラ……もとい、セリーナ・ウィリアムズに比べてなんてスマートなんだ!と世界から称賛されたこと、それを日本のメディアは誇らしげに報道したことを忘れたとは言わせませんよ。

日本のスポーツ界(この言い方嫌いだけど)にとっても、テニスという全ジャンルにおいても、大坂なおみが排除されていい理由なんて見当たらない。それくらい尊敬されるべき、ものすごい選手なんだということを、もう一度冷静に認識して頂きたいのです。

 

あなたがテニスファンじゃないから知らないだけ

この試合でセリーナ・ウィリアムズはラケットを叩き壊して、荒れに荒れて興奮しまくっていました。審判にも食ってかかって口答えして、喚き散らして抗議、口汚く罵っていました。

みなさん、よおく聞いてください。

これって「通常通り」なんですよ。

テニス見てないから知らないでしょ?

選手が試合中に興奮したり、判定に不服だったりして、ラケットを叩き壊すことなんて、プロテニスにおいては珍しことでも何でもありません。そんなことはほとんどの大会で見ることのできる現象です。

紳士と言われるあのジョコビッチだって、ガンガンラケットを叩き壊しているし、「これからもやめない」と公言しています。というか、ほとんどの選手がラケットに当たって壊しているんじゃないでしょうか。

大坂なおみの行為だって、まったく珍しいことじゃない。ラケットに当たって冷静さを取り戻すなら、それもひとつの手段だと考えているのがテニスを見る側です。こんなことでギャアギャア騒いでいるのはきっと「にわか」でしょう。

そりゃあメーカーだって、「望ましいことではない」と言わざるを得ないでしょうよ。「どうぞじゃんじゃん壊して」とは言えないもの(笑)。

そして、それと同じく、選手が審判に対して抗議して、罵るなんてことも決して珍しいことではありません。もちろん「ファックユー!」などのFワードは警告の対象になるし、罰金10000万ドル以上なんてこともザラですよ。

でもね、コートで「己」として戦っている選手の勝ちへのこだわりはそれ以上にすごいんです。わけのわからない判定を「人間なんだからミスもあるさ」なんて甘い考えで許すわけにはいかないんです。断固として認めない。自分は正しい。自分は勝つんだと強く思っているからこそ、何百万円の罰金を課せられてもなお、審判に噛み付いていく姿をテニスファンなら十二分に知っているでしょう。それこそがプロテニス選手のあるべき姿なんですよ。

テニスって、ものすごい精神力を必要とする個人競技なんです。己というものを出し切る……という考えから、彼らはああやって『意見する』のです。

「紳士のスポーツ」っていう言い方になんとなく騙されて、ラケットを叩き壊すなんて!と思うかもしれませんが、それは単にあなたがテニスを知らないだけです。

 

大坂なおみが可愛く見えるテニス界の悪童たち

さて、大坂なおみをどうしても叩きたい人は勝手にすればいいのですが、今回の問題をどうなんだろうなあと冷静に見ている人たちへ、私は他の選手の試合も是非見てくださいと言いたいです。

たとえば男子テニス、オーストラリアのニック・キリオスの試合なんか、度肝を抜かれますよ。彼ほどの警告を受け、彼ほどの罰金を超える者は今後出ないんじゃないかと言われているほどの選手です。

とにかくアンパイアや線審のミスに敏感で、口撃がものすごく切れ味のある選手です。私が見た試合では「てめえは高いところから人を見下ろして、悠長なもんだな。偉そうに試合を操作して、俺に不利な判定ばかりしやがって、罰金を食らうのは俺ら選手だけ。どうやったら、おまえみたいな奴をその椅子から引きずりおろせるんだ? 教えてくれよ」みたいなことを、試合中ず~~~~っと言ってるんですよ(笑)。

ラケットを折るなんてのは当たり前、客席に投げ付けることだってあります。ドリンクを審判に投げつけて警告を受けたときも「は? 水で手が滑ってペットボトルがてめえの椅子に当たっただけで警告? おまえ選手をなめてんの?」などと言っていました。

大坂に対してあーだこーだ言う前に、まず「おまえはキリオスの試合を見たことあんのか?(笑)」って言ってやりたいですね。

その他、ロシアのダニール・メドベージェフとかフランスのブノワ・ペールとか、見てご覧なさいよ。正直、大坂がとても行儀が良く見えるはずです。ギリシャのチチパスなんて、自分のコーチである父親に投げつけたラケットが当たって負傷させて、試合中にお母さんに怒られるっていう失態を犯していますからね。

あのジョコビッチだって、線審がちゃんとレイトコールしてるのに「アウトって言ったから振らなかったのにふざけんな!」と審判に食ってかかることもあって、テニスファンからそこまで人気がありませんからね。それにあいつ、クラスター出してるし。

まあ、そういうわけで、テニスっていうのはマナーを守って紳士的にやってりゃいいっていうスポーツではないんです。

 

大坂の記者会見拒否発言の問題点

以上のように、テニスを見たことのない人に、なんとなく分かってもらえたら嬉しいなというプチ知識を書いてみました。

プロなんでね、勝たないと意味がないんですよ。勝ちにこだわるというのは日本人のような玉砕根性ではとうてい叶わないシロモノなんですね。

で、もちろんプロ選手は、ただテニスだけをやってりゃいいなんて甘い世界ではありません。そんなことやってて食えなけりゃタダのアマチュアですからね。ですから大会側は、セレモニーとかポスター撮影とか記者会見とか、ひとつのイベントとして選手にこういうこともやってくださいね。それで私たちはスポンサーを集めて宣伝することができるし賞金を出すことができる。選手個別にスポンサーを紹介することもできる。こういった仕組みでサポートしている。その代わりに契約も守ってねっていう約束を交わしています。

今回は記者会見だけが取り沙汰されて「負けた選手もインタビューされるなんておかしい!」っていう声も上がっていますが、いやいやいや、負けた選手にもスポットを当てて、この選手が今後どう活躍していくのか、どうして負けたのか、考え方はどうなのかを報じていくこともひとつの「スポーツ・ジャーナリズム」じゃないですか。

それに、あまりにもそれはないだろうという質問は大会側が遮断することもできるし、何よりも選手自身が失礼な質問に「失礼だ」ということが大切ですし、アンチな意見にどう対応するかでファンが増えることもあれば減ることもあるわけです。個人として戦っているスポーツとしては至極当然の流れだし、大会側も負けた選手を晒しているわけじゃない。むしろ、勝者も敗者もフェアに扱っているじゃないですか。

最近は気に食わないことがあると、それに対して何でもノーを突きつけ、それがまるで正当な行為であるかのように勘違いしている人がすごく多いと思うのですが、フェアに与えられた時間と場所をどう活かすのかは個人に託された受け身の問題であって、嫌なものから逃げてもいいという理由にはならないと思うんですよね。そういった頑張って向上しない人間は、切磋琢磨する場所においては他者の邪魔にしかならないから、誰もが退場してほしいなと思うのは自然な成り行きではないでしょうか。

ところが、今回の大坂の問題は、またそれとも違うわけです。そうなってしまったのは、彼女が最後の最後に発した「自分は鬱に悩まされている」という言葉に他なりません。鬱であるならば、まず、それを治すことが先決だと私は思います。鬱が理由で今回のことを言い出したとするならば、試合に出ている場合じゃないと思います。鬱は死に直結します。舐めたら、あきません!

大坂個人にこんなことを言わせてないで、ちゃんとサポートチームとして正式に代表者が大会側や協会へ申し入れをするべきです。問題は深刻なのですから、ちゃんと正式に報告をし、こういう理由であるから記者会見は勝っても負けてもやめてあげて欲しい、または、完治するまで試合には出せないがランキングは保持したままにするとか、もっとやり方があるわけで、大坂も大会側も口論をしている場合ではないと私は思います。

先程も言いましたが、テニスは精神力が物を言うスポーツです。心が病んでいては絶対に勝つことはできません。私が好きなダスティン・ブラウンという選手も、すごい戦術を持つ選手ですが「キレやすい」という性質を持つためにランキングの上位に上がれない選手の一人です。それだけテニスは「心と直結」しています。

大坂はいなくなっていい選手なんかではありません。早く心を治して、またコートに帰ってきてほしいと思っています。

メルマガの購読はこちらか

BLACKザ・タブーのメールマガジンは毎月1日と15日に配信中。月額540円です。また、人気のあった記事をバックナンバーとしても購入することができます。