福山雅治が顔芸全開な『集団左遷!!』というドラマを見たんですが……

福山雅治が顔芸全開な『集団左遷!!』というドラマを見たんですが……

みなさんお待たせしました。大人気の「タブー郎のドラマレビュー」のお時間です。今回は平成最後の日曜劇場という触れ込みで名高い『集団左遷!!』を見てみました。久しぶりの福山雅治主演ということで、さぞかし中高年女性が下半身を湿られせていると思われますので、私も楽しみに見ていました。

 

『集団左遷!!』は、作家の江波戸哲夫さんの同名小説(!!は付いてない模様)と、「新装版 銀行支店長」をミックスして原作としているようです。江波戸さんは元三井銀行に勤めていたようで、1983年より文筆家として活動。原作の「集団斡旋」は1993年に出版されているようです。

 

どおりで……………

 

この原稿を書くにあたり、その辺りを調べていて納得しました。脚本家も演出家もROOKIESコンビだし、主演は福山雅治、ここんとこヒットを飛ばし続けている日曜劇場なので、絶対に外さない布陣だとは思うのですが、

 

とにかく古い。

サラリーマン像がやたら古い。

 

これが私の率直な感想でした。15年以上サラリーマンをやってきた私でさえ赤面してしまうほど、これって「昭和時代の話じゃなーーい?(r.i.p ギター侍)」としか思えなかったんですよね。逆に言うと、サラリーマンって舐められてんな~~と(笑)。

 

まず、このドラマ。どうして銀行の話を選んじゃったんでしょうか。90年代にこの原作は一度、柴田恭兵を主演に映画化されていますが、そこから20年以上も経って平成が終わろうとしているのに、なぜ銀行の話をやろうということになったのでしょうか。この20年、銀行は一度たりともイノベーションを起こしてはいませんし、近年は「オワコン扱い」され、近い将来無くなるものだと若い世代には認識されています。だからこそ、最後の銀行の焦りやもがきを描こうとしたのでしょうか?

 

大合併で地銀を吸収した三友銀行蒲田支店が舞台となるのですが、いわゆる平成の大合併によって生まれた銀行内のヒエラルキーがまずクローズアップされます。元力の弱い方の銀行の人物が頭取をやっていて、そこに元強い方の人事部長がメスを入れる。旧弱い方の銀行の支店はどんどん潰していくことになった。もちろん行員はクビ。その潰す予定になったひとつである蒲田支店の新支店長となった福山雅治が、人部から「何もするな。潰れるまで静観せよ」という命令にそむき、ノルマを達成していこうと奮起する内容です。いわゆる、2つの系統の出身社員がいて、その内部紛争を描こうというものです。

 

ここまで聞いていて、嫌になった人はきっと20~30代の方ではないでしょうか。おお、面白そうじゃないか!と思った人はきっと50歳以上の高年の方がほとんどだと思われます。私は完全に冒頭から嫌気が差してしまいました(笑)。

 

このドラマでは、とにかく福山雅治が走ります。そこタクシーでしょ、そこ電車でしょってシーンは全て走らせています。あざといんですよねえ。そのやり方と、福山の顔が。「一生懸命風でっしゃろ?」という声が聞こえてきそうなくらい。がむしゃら! 24時間働く! 仕事が命! 仲間! なんなのこれ、時任三郎がエナジードリンクのCMに出ている時代かよ。最終的にはほぼ鬱みたいな状態で会社をやめた私からすると「しょーもないなあ」としか言い様がありません。

 

不思議なことに、このドラマで主人公の福山支店長の敵となるのが三上博史が扮する人事部長なんですけれど、その人事部長が頭取より偉いんですよね。そいつにリストラなどの責任が一任されているのか分かりませんが、敵の役職が小物だし、人事部なら嫌われているから丁度いいだろうという安直な考えが見え隠れします。また、蒲田支店の副支店長が分かりやすくスパイなんですが、きっとクライマックスに向けてこの人も福山の「熱さ」に負けて仲間になるんだろうなということも見透けています。その他、やる気の薄い行員たちのパーソナリティは今後明らかになっていくんでしょうが、彼らも福山の「熱さ」に感化されて一丸となって売上を上げていくんだろうなということが初回で分かりました。キーワードは「熱意」であり「頑張る」です。一生懸命に頑張れば、きっと何とかなるだろうという、現代ではそれを「無責任」と呼びますが、会社の仲間を家族のように捉えていく不気味な行く末を感じ取りました。植木等が言っていたアレですよ「見ろよ青い空」ってやつ。

 

最近はこの「アベンジャーズ方式」をやっておけばドラマはヒットするんでしょうか。それはちょっとキツイですよ。

 

アベンジャーズ方式は、共通の目標をもった人々が集い、力を合わせて問題を解決して行く物語ですが(特攻野郎Aチーム方式でも可)、サラリーマンの悩みの殆どが「人間関係」なわけですから、これは相手が変わらなければ問題が解決しないという理想中の理想の物語なんですよね。今の銀行を描くには、あまりにも武器が古く、嫌な予感しかしないのです。

 

つまり、このドラマは昭和時代の良かった思い出に浸っているバブル世代以上に向けて作られているんでしょうね。彼らからしたら「若い」福山雅治に理解を示すことで「若いもんのことを分かってる」風を装うことができるし、ああ昔は俺もこうだったよな母さんと離婚されてもなお独り言を言ってるじいさんたちのための、そして福山雅治ガチ恋勢のためのドラマなんでしょう。

 

初回の視聴率が13%を超えていたということですから、今後が楽しみですが、若い人は次から見ないと思います。先にも述べましたが、とにかく古い!んですよ。これ、今を描いているんですよね? だとしたら、すんげえ時代錯誤だなあと思います(わざとやってると思いますけどね)。

 

小池一夫が提唱した「キャラ設定」という観点から見れば、このドラマはほぼ完璧。欠点だらけの主人公、カリスマ性のあるライバル、主人公の周囲にいる「説明役」の副支店長や行員たち。どこを取っても、ドラマとしてはプロの作りですよね。面白いかどうか、新しいことを描けているか、現実をえぐれているかを除けば、セオリーだけは完璧なのではないかと思います。

 

たとえば最近ヒットした「家売るオンナ」もそうでした。欠点だらけだけど応援したくなる猪突猛進なオンナ主人公、カリスマ性のあるライバル、主人公の周囲にいる「説明役」の店長やサラリーマンたち。キャラ設定は完璧でした。そしてこの時代に「家を買う人はどんな人たちか」をよく取材しているんですよね。大石静さんの脚本は、いつも取材が素晴らしいんです。この取材力を持ってして今を切り刻んでいるので、見るものを深く納得・感動させる力があるんですよね。そこへ顔をドアップで見ていたい女優・北川景子を持ってきているんですから、当たらないわけがない。新しいし、面白いし、美しい、んですよ。

 

『集団左遷!!』もほぼ同じです。ほとんどの条件を満たしているのですが、新しいことがどれだけ描けるのか!? が今後の視聴率に影響してくるのではないかと思いました。(中村アンが紅一点というのは激しく「?」ですけどね)

 

でも初回放送を見る限り、「危ういな~~」としか思えない状態でした。

・がむしゃらサラリーマン(うつ病になる)

・上からの命令に奴隷のように従う同期(転職すればいいやん)

・奥さんが専業主婦っぽい設定(Me too案件)

・夜の10時に帰ってきて、またすぐ出ていく(ブラック労働)

・今どき奥さんのパック姿で驚くシーン(古い、とにかく古い)

・その奥さんが八木亜希子というキャスティング(美しくない)

・銀行という組織の内部抗争(どうでもいいよ)

・幼馴染と会っても福山の仕事の話ばかり(友人という名のパワハラ)

 

どうでしょうか。今の世の中が「もうそろそろ駄目だよね」と言い始めているものが全て当てはまってしまっています。45歳以上はリストラという流れになっている世の中に、このようなドラマを打つ意味としては、傷のなめ合い以外に考えられないんですよね。そういう側面で考えれば、よおくリサーチしているドラマってことになります。ほぼ逆神として当てはまってますから(笑)。

 

いずれにしても、私のようなフリーランスにとっては見る必要のないドラマです。古き良き時代が好きだった人々が好んで見るのではないでしょうか。神木隆之介という日本の宝みたいな役者が出ているんですから、ヒットしてほしいなとは思いますが。

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