ラブホでハメ撮り中に刃物を持った男が乱入してきた時の私の対処法

ラブホでハメ撮り中に刃物を持った男が乱入してきた時の私の対処法

2005年くらいがエロ本の最期だったような気がします。私が所属していたURECCOも、とうとう売れなくなり、編集部解体の危機となりました。

 

裸はネットでタダで見られます。
みんな自分のPCで思い思いの画像や動画見ますよね。
それによって一番最初にダメージを食らうのが“正統派グラビア雑誌”でした。

 

あの頃は、URECCOやデラべっぴん、PENTHOUSE、スコラ、sabraなんてのがたくさんありまして、天下一品のグラビアアイドルやセクシー女優に妄想級のポーズを取らせて熾烈な争いをしていました。グラビア印刷にこだわり、シズル感や肌質、シャドー部のスミのにごりを洗って滑らかに……なんて頑張っていたんだけど、デジタルの波には全くと言っていいほど抗えなかった訳です。とにかく「エロ」は、どの雑誌のジャンルよりも一番先にダメになっていたんです。

さて、そうなると、客を取り戻そうと必死になりますよね。
この頃、エロ雑誌がどういう潮流にあったかというと、スバリ「素人過激路線」でした。日本の歴史において、不況になるとアイドルが跋扈すると言われていますが、この時のエロ本業界はとにかく過激に、とにかくエグいものを! に走っていたように思います。今までのように綺麗なお姉さんが脱いでるからって売れなくなったんだから、まあ当然といえば当然の流れですね。今から思えば、むしろ逆のほうが良かったんじゃないか、とさえ思います。

 

 

「URECCO解散になった。全員異動が決まった」

 

 

大島編集長のミリオン出版の社歴において、もっとも力のなかった台詞でした。もはや「ウレッコ」という雑誌を作っていることが恥ずかしくなるくらい、URECCOは売れてなかったのでした。40万部を超えていたという伝説の雑誌が終了しました。ウィキによるとURECCOの創刊は1986年とありますが、約20年ほどの歴史だったんですね! こうして大島さんはURECCO最後の編集長となり、ファッション雑誌の部署へと去って行きました。

 

残された編集部員は、このあと地獄を見ることとなります。

 

URECCOが最期の頃、大島編集長と私以外に、島田と福田という後輩がいました。
島田は私が入社したのと同じ年の暮れに入ってきた人物で、一応後輩ですが同期みたいなものです。私とカルタは彼を島やんと呼んでいました。私にこう言われるのも奴は嫌だろうけど、誰もが彼をイケメンと賞していました。芸能人で言うと長瀬智也です。見た目も中身も長瀬智也以外にあり得ないでしょう。その昔、三橋副編集長がいた頃、大島・三橋・島田はURECCOイケメン三銃士と呼ばれ、明らかに調子に乗っていました。ビデオ担当だった島田は、ビデオメーカーの広報さんたちと仲良くなるにつけキャーキャー言われ、いつぞや「URECCO編集部は単体編集部」とまで言われるようになっていました。その単体編集部を一目見ようとビデオメーカーの広報さんたちがミリオン出版を訪れるという現象が起きた時、私はこの三人を本当に恨んでいました。
「キャーーー、キャーーー! 島田さん、ああ、みんなイケメン!!!!」
と会社に急に知らない女性が来るんですよ。その度にイケメンでない私は、消しゴムを落としたふりをして机の下に這いつくばり、歩伏前進でURECCOgal編集部まで逃げていくという無駄な体力を使っていました。カルタを見るとホッとしました。顔が良いことだけで生きてきた奴はそれ以上の努力をしませんからね。本当に腹立たしい出来事でした。
福田は私たちが入った、3年後くらいに入社してきたでしょうか。万年坊主で感情の起伏がなく、衝動で人を殺したことがあるんですよぉと告白されても驚かないタイプでした。出社する時に横断歩道前の赤信号で待っている隣の女性に声をかけて連絡先を入手する猛者で、「福田が15分でどれだけの女性をナンパできるか」という企画をやってみたんですが、20人ほどに声をかけ3人の連絡先をゲットしてきました。しかも水道橋駅前で。彼はその後BLACKザ・タブーでも編集をし、現在は超一流週刊誌で記者をやっていますが、そんなのより日焼けして渋谷でスカウトマンとかやった方が手にする金額もケタ違いなんじゃないかと思います。頭も良くて仕事もできるので職には困らないだろうけど、マッド野郎のイメージは払拭できません。

 

そんな島やんと福田と私は、なんとGON!編集部に異動となったのです!

 

念願のGON!へ異動できてさぞかし嬉しかっただろうとお思いになりますよね。けど全くもって逆ですよ。この頃のGON!は単なるドエロ本に移行しており、はっきり言ってあそこまで落ちぶれたGON!なんて興味のカケラも持っていなかったんです!
しかも、世の中の「素人過激路線」の流れに乗りまくっており、当時のGON!のメインは「出会い系で見つけた素人女とハメまくってくる!」がコンセプトでした。オサレエロ本で5年間も飯を食ってきた我々三人には修羅の道でしかなかったのです。
さらに我々に追い打ちをかけたのは、この糞GON!のT編集長の存在でした。彼は元々URECCO編集部出身の先輩なのですが、我々を見下してこう言い放ったのです。

 

「お前らみたいなグラビア上がりは何の仕事も出来ねえ。とにかく腐った根性を叩き直してやるから覚悟しろ」

 

5年間、編集者として飯を食ってきた人間、しかも自分も所属していた編集部の人間にこのような暴言を吐いたんですよ。私のブログは基本的に実名で書くことにしていますが、このT編集長には後々にも許しがたい暴挙と逃走をされ、一度事実を全てここに書き出して糾弾しなければならないと考えていますので、あえてイニシャルで書かせて頂きます。

 

「なんだ、この企画書は! 出来もしねえことを書くんじゃねえよ!」
「おい福田ーー! このタイトルやめろーーー!」
「おまえデブばっか撮影してきてんじゃねえよ!」
「編集者として全く使えねえな、おまえは!」
「何なんだよこのページは。記事を舐めてんのか!」
「写真だけ撮ってりゃいい雑誌じゃねえんだよオラ!」

 

我々三人は来る日も来る日もこのスキンヘッドのおっさんに罵倒され、みるみる痩せていき、体調が悪くなりました。もう大人なので三人集まってスキンヘッドの悪口を言うようなこともしませんでした。それどころか「俺たちが足りてないんだ。がんばろう! 食らいついていこう!」とさえ言い、励まし合っていました。今この原稿を書きながら涙が出そうになります。なんで俺たち我慢してたんだろう……。

主な仕事の内容は、会社から支給された携帯電話で出会い系サイトや掲示板にアクセスし、援交目的の女性と会い、ホテルへ行きハメ撮りしてくる…でした。
これを毎日の日課とし、終わったら会社に戻ってきて写真データを保存、でまた次の援交女に会いに行くという流れでした。通勤と食事と睡眠とスキンヘッドからの罵倒以外はハメ撮りをしていたという、あまり思い出したくない暗黒時代でした。

 

 

 

「サポ2 ホ別 @渋谷」

ある日、渋谷で会いたいという女性が捕まりました。道玄坂を登って行くと右手に交番があり、その前で待ち合わせました。ラブホテルは百軒店に無数にあるのですが、当時援交のプロとなっていた私は交番裏のマニアックなラブホテルをよく使っていました。以前に撮った子と会わないためです。道もちょっと分かりにくいので次に行こうとしても辿り着けないんですね。

その女性は小柄でスレンダーでしたが巨乳という20歳位の板野友美似でした。この頃の私は「カワイイ子が来た」とか「ブスが引っかかった」というような一般の方が抱くような感情は既に失っており、「約束通りに来てくれた……助かる」というようなブラック企業に勤めている人間と同じ類の思考回路でした。スキンヘッドのパワハラと毎日のハメ撮りによって心が壊れていたんだと思います。

ホテルの部屋に入ってから女性に「じゃあ服を脱ぐところから撮っていくね」と説明します。援交に情緒なんてありませんよ。決められた時間の中でチャッチャと脱がして撮る、これしかありません。ただ、この時、板野友美が妙なことを口走ったんです。

「今日って3くれるんだよね?」

いや、メールで2って約束したじゃん。ダメなの? 私は言いました。2でも3でも良かったんですが、直前で話を変えられるのはムッとします。結局女は「ふ〜ん、2かあ……分かった」と了承しました。
このやりとりがあった後、服を脱がせて、シャワーを浴びさせ、またベッドに戻り、体位別のハメ撮り……という流れで撮影をしていきました。

 

 

撮影をしていきましたが、私、気付いていたんですよ。

 

 

この女が「ふ〜ん、2かあ」と言いながら携帯をいじっていたんですが、その時、よくホテルに置いてある「ホテル案内の冊子」の表紙をチェックし、次にキーに書かれている部屋番号を携帯に打ち込んでいることを。
つまり、外にいる誰かに、自分の居場所を伝えている所を横目で捉えていたのです。

 

「これは来る」…と思いました。

 

2時間弱ほど経ち、そろそろ撮るものもなくなって、撮影を終えようかと思っている時です。私の直感は当たってしまいました。

 

ドンドンドンドンドンドン!!!!

 

ラブホテルの部屋の扉を勢い良く叩く音がしました。次の瞬間に女が入り口までドアを開けようと走っていきます。その姿を確認しながら、私はカメラのSDカードをケツにはさみ素早く服を着ました。荷物も最初から隅っこに固めており、すぐに出られる状態です。もちろん援交取材の時は身分証明書やクレジットカードなどは会社に置いてあります。準備は万端、あとはどんな奴が入ってくるか……なのですが。

 

短髪はジェルで真っ逆さまに固めており
目は一重
口元は黒いマスク
背丈は180センチ位
体重は100キロ近いと思う
上下、白のウインドブレーカー
足はサンダル
左手は上着のポケットに入れらたままで
こちらに向かって尖っている
右手にはセカンドバッグ

 

この出で立ちの大男が部屋に入ってきたのです。板野友美はその男の後ろで不敵な笑みを浮かばせています。……ついに、私も本当の美人局に遭遇してしまったようです……。

 

「オマエ、カネ、ハラワナイノカ?」

大男は日本人ではなかった。下手くそな日本語を喋っているが、イントネーションからおそらく韓国のニューカマーだろう。この援交女のケツ持ちをしているということは、それなりの組織に属しているのか、それともチンピラか? 頭の中でグルグルと情報をかき集める。

「なに入ってきてんだ。警察を呼ぶぞ、失せろ!」

一応は抵抗をする素振りを見せた。ここで白旗を揚げる訳にはいかない。この腐れ援交女のデータは絶対に持ち帰ってやると決意している。これが売れてなくてもエロ編集者の魂ってやつだ!
だが、次の瞬間にその勢いも失せてしまう。男が左ポケットから手を出した。

ギラリ!

小刀……短刀……? 奴がポケットの中で尖らせていたのはフェイクではなく本物の刃物だった。ラブホテルの部屋の暗い照明の中、そいつは鈍く光った。

「オマエ、カネハラエ! オマエ、カネハラエ!」

男がだんだんと興奮してきているのが分かる。この睨み合いはすでに10分ほど経過しているのだ。まずい……これ以上時間はかけられない。こいつが焦って何をしでかすか分からない。私はホテルの電話の受話器を持った。

「警察を呼ぶ。いいか、出て行くんだ!」

そう言うか言わないかのうち、男が刃物を振り上げて襲いかかってきた。とっさに避けたら、漫画みたいに刃物は空を切った。そんなに広くない部屋だ。男は私から簡単に受話器を取り上げた。そしてまた飛びかかってきた。

ドン!!!!

男の腹を前蹴りで一撃、見事に当たって奴は壁に背中を打ち付けた。まさか小さい時から習っていた空手が“こんな所”で役立つとは。いやしかし、役立ってはいない。男はすぐに体勢を取り戻し、私にまっすぐと短刀を突き付ける。みぞおちを蹴り込んだつもりだったが外してしまったようだ。情けない!

「カネハラエ……カネハラエ……ウウウーーー」

さっき蹴りを入れた瞬間、ケツに挟んだSDカードがズレて、膝の裏あたりにまで落ちてきた。アカン……これだけは渡せない。私は後ろに下がりながら、女に言った。

「おいブス! 金は最初に払っただろ! おまえ2って言っただろ!」

板野友美は入り口まで続く通路のあたりで様子を見ているが私の問いには答えない。この女、いつもこの男と組んでこんなことをやっているのか? 援交やってる男なんて何があっても警察になんて行けないだろう。それを逆手に取って糞みたいなことをやっているのだ。もう逃げられなくなって、次に男が飛びかかってきたら刺されるだろうというところで私は言った。

「分かった、分かったよ、いくら欲しいんだよ!」

上下シャカシャカジャージの大男は私に刃物を突き付けながら答える。

 

 

「イチマンエンダ バカヤロー」

 

 

なるほど……敵もなかなかの手だれだ。想定外の金銭を要求してきやがった。これはATMで下ろさなければならないパターンではないか……ん?

 

「イチマンエンって、1万円か?」
「ソウダ、オマエ、サイショニ3ッテイッタロウ! アト1マンエンダ」
「いや……1万円って(気を取り戻して)、いやあの女は最初に2って言ったぞ!」
「ウソヲツケ。3ダ。アト、1マンエンハラエ!」
「(気をしっかり張って) 2って言ったってえー!」
「3ダ! アトSDカードダセ!!」

 

私はカメラから先ほど入れ替えたダミーのSDカードを取り出し、震えてるような演出をしながら手渡した。4GBのカードだ。風景くらいしか入ってないやつだ。
完全に拍子抜けしてしまい、私はすんなりと男に1万円を払った。男はそれをポケットに入れると、女に「出るぞ」と合図し二人は部屋を出て行こうとした。

「ちょっとまてーーーー」

まったくとがめる気がない私の空虚な声だけが部屋に響く。なんだこいつら、本当に1万円だけで帰っていくのか? すると、男が振り向いて言った。

「オレノ アシダイモ イチマンエン」

すぐさま受話器を取る振りをすると、男は慌てて出て行った。最後はちょっとしたギャグ風で終わらせやがったのだ。

1万円で命拾いした私は部屋で呆然としていたが、次第に怒りが湧いてきた。「たとえ1万円でも怖い目に遭った! ホテルのフロントに文句言ってやる!」と。帰り際にフロントに男が入ってきた一部始終を話したが、ホテルの人間は私にこう言ってのけた。

 

「そんな事実は、ないですねえ」

 

この糞ホテル。いまだに営業してやがる。名前出してやってもいいんだぜ。犯罪に加担してる道玄坂交番裏のラブホテルさん。出る時に部屋の空室を表示するパネルをグーで割ってやった。

私が警察に通報しなかったのは、あの頃体に染み付いていた「会社を守らないと」という使命感からでした。あ、今は微塵もないですよ。す〜ぐ通報します。

 

SDカードは守った。
被害は1万円で済んだ。

 

こうしてヘトヘトに疲れきって返ってきた私にスキンヘッド編集長は、

「ダメダメ! そういう時お金払っちゃダメだって。そういう時はね、警察、ケ・イ・サ・ツ!」

この時、お得意の空手で顔面を蹴りでカチ割っておくべきだったかもしれません。あの頃いかに社畜だったことか! 私は「そうですか〜。でも経費で落ちますよね?」と下出に出てしまったんです。なんというか、本当に情けない限りでありんす。

 

ちなみに、このことはきっちり記事にしました。
「エンコー美人局女にご注意!」
というタイトルで、“援交時のトラブルを回避する方法”というものを指南していますが、これこそが空虚ですよね。援交時のトラブル回避って……。

 

 

あの時のGON!編集部に、まともな人間は一人もいなかったんです。

 

 

追伸
あとで携帯をチェックしてみたら、確かに女が言うように「3万円」で交渉していました。私は素直に「3だったね。ゴメンね。でも、ああいうことはもうやめてね」とメールをしたんですが、当然行き先不明でメールは戻ってきました。