エロ本編集者たちと性病の百年戦争

エロ本編集者たちと性病の百年戦争

エロ本編集者は24時間パンツを脱げる人のことである。

 

昔の偉人たちはこういう風に言っていたんですね。どんな場所でもチ◯コを出せるか、射精できるか、To Be or Not To Be、それが問題なんですね。まあ、いわゆるこれはエロ本を作る上での「心意気」みたいなもんですよね。

で、そんなロックな心意気でいると、性病にかかりますよね。

みなさんのようにセーフティ・セックスばかりしていれば関係のない話なんですけど、そんな安全な場所ばかりにいると人はいつか冒険がしたくなる時が来ます。危険を冒すと、当然リスクが発生しますよね。怪我したり、打ったり、折ったり、“もらったり”します。もらった時にあなたが未経験であれば、けっこう恐ろしい現実に直面しますよね。そんな時にどうしていいのか検索したりしますよね。

 

はい、あなた。
検索して私のブログに辿り着いたんじゃないですか?
あなたが性病にかかってしまったかもしれない時、何をするべきなのか。
ここに私の経験を記しておくことにします。

 

エロ本編集者たちは有史以来、性病と闘ってきました。
かくいう私も月に1度は性病検査をしていました。
常に身体をクリアに、ボディーを透明にするために気を付けていました。
いつ何時、何があるか分からない仕事ですからね。
男優さんが風邪で倒れて「おい、おまえ行け」なんて言われた時に
(ああ〜〜いま、膿んでんだよな〜〜)
なんて、最悪じゃないですか。

 

 

みなさんは新宿駅から中央線または総武線に乗って四谷方面に向かう時、電車の窓からこれでもかと言わんばかりにデカい文字で『性病』と書いた雑居ビルを見たことがありますか? 性病って書いてんだから、あそこは性病の専門病院なんです。
ですがとても特殊な病院で「性病科に行ったことを記載して欲しくない」人が行く病院、つまり保険証による診察が出来ない病院です。私は特に記載されても困ることはないのですが、何年か前に試しに1度行ってみました。
すると中はですね、患者同士があまり顔を合わせないような構造になっているんですよ。まるでソープランドの待合室のように気を遣ってくれるんです。で、問診票に症状を書いて縦20センチ横20センチくらいの小窓をノックしますと、

“シャッッ!”

とそこが開きまして手が出てきます。問診票を渡しますと、
「7,000円です」
と料金を請求されるんですね。性病の検査に7,000円って、べらぼうに高いと思うのですが、そこはそれ足元を見た商売なのです。

“シャッッ!”

待っていると小窓が開きます。
「岡本さん、中へ。“シャッッ!”」
何もない無機質な部屋に机だけが置いてあり、そこに医者が座っています。いや、あれって医者の免許を持った人なのかは謎です。とりあえず色々話して、尿を取って、また待っていると部屋へ呼ばれます。
「クラミジアですね」
などと病状を告げられ、薬をもらって出てくるわけです。
正直ここは、出るときも入るときも、ラブホテルに入る50倍は恥ずかしいです。

 

 

一度、なんだかもう、我慢できないくらい痒くなったことがあるんですね。
日中は人気のないところで掻きむしっていましたし、寝てる時は無意識に掻きむしっておりましたら、皮膚がただれてとんでもないことになりました。鯖にあたった時ってまだらに蕁麻疹が出ますけれども、下半身がそんな状態で熱を持っているんですね。こりゃあイカン、初めてのやつに罹ったかもしれないと思い、新宿駅西口の小田急ハルク裏にある老舗っぽい病院に行ったんですよ。

「岡本さん、中へ」

と言われて診察室に入ると、村山富市そっくりな爺さん先生と20人位の女性スタッフが私を迎えてくれました。爺さんが私に問診している間、女性たちは黙って私を見ています。すごく嫌な予感がしました。

爺さん「じゃ、下を脱いで、そこに寝て」
岡本「え……あの、ここで、ですか?」
爺さん「そうじゃよ? 何か不満でもあるかい?」
岡本「いえ、いえ、ここですね」

私は20人の女性たちに見つめられながらズボンを脱ぎ、パンツを脱ぎました。そして診察台に仰向けに寝ると、爺さん&20人に囲まれ、全員から見下されました。

 

 

「君たち、よく見なさい! これが毛ジラミじゃ。いいサンプルじゃのう!」

 

 

ピンセットで私のイチモツを裏返したり元に戻したりして弄っていた爺さんが嬌声を上げました。どうやら噂には聞いていた毛ジラミとやらが私の陰毛の中で暮らしていたようです。こいつが毛穴に住んでは卵を産み、出てきては皮膚をサワサワするので、痒くて痒くてたまらないという症状でした。

 

「青年、よおく聞くんじゃ。
毛ジラミというものは性病には属さーん。
よって自ら薬局に行ってもらうことになるぞよ。

いいか、『スミスリン』という薬を買うんじゃ。
そいつをな、1週間、塗布するんじゃぞ。
したらば完治する。
あまり悪さするでないぞ」

 

私はスミスリンをマツモトキヨシで購入し、家に帰って新聞紙を敷き、そこへお尻を乗せました。スミスリンの粉をチ◯コにふりかけしばらくじっとしていますと……ボタッ、ボタッと小さな小さなダニのようなものが落ちてくるのが初めて見えました。

「こんなのがおったんかい!!!!(泣)」

その1度で成虫は70%ほど死滅します。2度めで全滅しますが、毛穴にまだ卵が残っています。そいつらが羽化するのを待って3回目、とどめに4回目をやったら終了でした。

スミスリンとは1981年に日本初のシラミ駆除医薬品として開発された薬で、シラミのいない現代では毛ジラミの特効薬として知られています。スミスリンって名前は製造元の住友化学から来ていると聞きました。今は金鳥も取り扱っているみたいですが、ライセンスを売ったんでしょうか? 粉と液体がありますが、私が買った時はまだ粉しかありませんでした。絶対に液体の方をお勧めします。母親が、小さい時に進駐軍にシラミ駆除の粉をかけられたと言っていましたが、まさか息子が東京の空の下で息子の息子に粉をかけてちょっと涙ぐんでいるとは想像もしなかったでしょうね。

 

で、問題はこれで終わりではないんですよ。

 

毛ジラミとか性病ってパートナーに伝染るじゃないですか。もし相手に伝染っていたらですよ、ピストン輸送でまたこっちに戻ってくる。だから根絶することが大切なんです。泌尿器科の先生にはこれをうるさく言われます。けど、素直に話してしまうことによる危険性を先生方はわかっちゃいないんだよなあ。
私は当時付き合っていた彼女の部屋へ酒を飲んでから行き、こう言いました。

 

「じゃ〜〜〜ん、T字カミソリ〜〜〜。
俺さ〜〜パイパンが好きなんだよね〜〜〜実は。
剃っちゃお、な? 今日、剃っちゃお!!!」

 

彼女は青ざめて逃げ惑いました。こいつ、こないだまで手入れしてない密林が好きだとか言っといて、絶対おかしい! と叫ばれましたが、もうこれは使命です、強引に押し倒しました。

 

「なに!? ねえ、酔ってるの!?」

 

大丈夫、絶対に怖くないから。パイパンが好きだから。今日は特別なローションも持ってきてるんだ。スミス……いや、ペペのイイヤツをね! 剃りながら見ていましたが、彼女には毛ジラミはいませんでした。
あの時のことを元彼女にあやまりたいです。
どうもスミスリン。

 

 

クラミジアとかはですね、もう罹患したらすぐ分かります。あなたも風邪を引いた時にいつもより鼻が出たりしますよね。あれと同じです。いつもより下から鼻が出てるんです。そしたらすぐに泌尿器科か皮膚科へ行けばいいんです。
逆ナンされて付いて行ったら鼻がちぎれた話』でも書きましたが、私は阿佐ヶ谷にある超有名な泌尿器科へ通っていました。ここはめちゃくちゃ人気があって、朝予約しても15時以降まで平気でかかってしまう病院で、1日かかりです。
先生はスピルバーグみたいなヒゲをたくわえた50歳位の物静かな方です。もちろん診察台の時は女性スタッフはどこかへ行ってくれます。

 

手術用の手袋をはめ、
ローションを人差し指にたらふく付けます。
下半身丸出しの私は仰向けに寝ており、
両足を抱え込むように支持されます。
ゆっくりとアナルを拡張されながら、
ふっと息を吐いた時に、
先生のモノがグググッと入ってくるのです。
それからGスポット、もとい前立腺を
ギュギュっと刺激されます。
内側から何度も何度も刺激されます。
そうこうしていると、
ああああ、意識とは裏腹に、
陰茎の先端から透明な液体が溢れてくるのです!

 

もうね、気分は最悪ですよ。毎回これをやられる度に、何かを失った気がします。それからそれを検査にかけて、数日後に結果を聞きます。
クラミジアとかカンジダとかトリコモナスだったら、抗生物質を出してくれます。言われた通りにきちんと飲んでいたら次第に治ります。もちろん服用中のセックスは厳禁ですよ。
さすがに私も、淋病や梅毒にはかかったことはありません。もちろんHIVの検査もしていますが陰性です。
性病検査はこうやって気軽に行った方がいいと思いますよ。
あと、先生は面白いことに「どこで遊んだか?」ということを聞きます。私が「(取材したのは)池袋でしたかねえ」と言うと嬉しそうに「あ〜、最近池袋はクラミジアが流行ってんだよね〜}と言っていました。病気にも地域でブームがあるんですね。

 

 

ちなみに私の同期の中山カルタはヘルペスにかかりました。
それをカメラマンの稲村さんにいじりにいじられていました。
「ヘルペスって空気感染するだろ? 寄るな寄るな」
と言われた時に彼の中で何かが切れたんでしょう。
カルタは大御所カメラマン稲村幸夫に走っていってしがみついたのです。
「ぎゃ〜〜〜〜!!!! ヘルペス伝染る〜〜〜!!!!」

おまえら子どもかっ!
と、性病にならない秘訣は「根性!」と言っていた伊藤編集長が怒鳴っていました。

メルマガの購読はこちらか

BLACKザ・タブーのメールマガジンは毎月1日と15日に配信中。月額540円です。また、人気のあった記事をバックナンバーとしても購入することができます。